腸管が捻れる(ねじれる)病気の一つに、S状結腸軸捻転(読み方は「エスじょうけっちょうじくねんてん」英語表記ではsigmoid volvulus)があります。
S状結腸軸捻転とはどういったことが原因で起こるのでしょうか?
またどのような症状が起こり、画像ではどのように見えるのか、治療はどうするのか。
今回は、S状結腸軸捻転について、図(イラスト)や実際のCT画像を用いて解説しました。
S状結腸軸捻転とは?
S状結腸は大腸の一部であり、後腹膜に固定されない結腸として知られています。
そのS状結腸がなんらかの原因で捻れた状態をS状結腸軸捻転と言います。
この腸管が捻れた状態である、腸管軸捻転は、S状結腸>盲腸>横行結腸の順に起こりやすいと言われています。
S状結腸捻転とも呼ばれることがあります。
S状結腸軸捻転の原因は?
S状結腸軸捻転の危険因子は
- S状結腸過長
- 便秘
- 高齢
- 長期臥床
- 精神疾患
- 妊娠
- 小児の場合は、Hirschsprung病や鎖肛
などが報告されています。
上にも述べたようにS状結腸は後腹膜に固定されていない腸管ですので、長すぎることは捻転のリスクとなるわけです。
S状結腸軸捻転の症状は?
S状結腸軸捻転は、突然の腹痛と腹部膨満で発症します。
症状は非特異的と言えますね。
S状結腸軸捻転の診断は?画像所見は?
S状結腸軸捻転の診断は、レントゲンやCTの画像検査によってなされます。
レントゲン
レントゲンでは、S状結腸がガスで拡張し、コーヒー豆様に見えるcoffee bean apperanceを認め、この場合レントゲンのみでも診断可能です。
腹部CT
CTでは、鳥のくちばし状に見えるbeak sign(ビークサイン)や、腸管及び腸間膜が渦巻き状に見えるwhirl sign(ワールサイン)が診断に有用とされています。
症例 70歳代女性 突然の腹痛
腹部CTの横断像です。
拡張したS状結腸を認めており、beak signを2箇所で認めています。
これらは交差するように位置しており、S状結腸軸捻転を疑う所見です。
造影CTの冠状断像ではレントゲンで認めるコーヒー豆様に見えるcoffee bean apperanceをCTにおいても認めています。
またbeak signのほか、渦巻き状に見えるWhirl signを認めています。
S状結腸軸捻転の治療は?
理学所見や臨床検査データから腸管壊死や虚血、穿孔がない場合は、内視鏡による整復術(内視鏡的整復術)が適応となります。
逆にこれらを疑う所見がある場合は、手術の適応となります。
S状結腸軸捻転の手術適応
- 腹膜刺激症状
- 血便
- ショック
- 遊離ガス(free air)
- 内視鏡的に整復できなかった症例
とされています。
参考文献:わかる!役立つ!消化管の画像診断 P240,241
最後に
S状結腸軸捻転についてまとめました。
- S状結腸軸捻転は大腸の一部であるS状結腸がねじれる事で発症する。
- 突然の腹痛や腹部膨満が症状として起こる。
- レントゲンや腹部CTが診断には有用。
- 治療には早期で合併症がない場合は内視鏡的整復術が適応となる。
腸管の病気として、盲腸(虫垂炎)や腸炎、憩室炎などと比べると頻度はかなり少ない疾患と言えますが、非常に特徴的な画像を示すので覚えておきましょう。
参考になれば幸いです( ^ω^ )